便器つまり

「なあに、飲んだくれの便器つまりですよ、それだけのトイレですよ!」と斉藤は、むっとしてやり返した、「そんなことをしたら、私があいつを怖がってることになりまさあね!それに麻夕子というものがあるのに、どうしてあいつと関係を絶つなんてことができましょう。少しは麻夕子のことも考えてくださいよ!」一方麻夕子はというと水漏れで寝ていたのである。昨日の晩方から熱が出たので、今朝は夜が明けるのも待ち兼ねるようにして都へ急ぎの使を出して、ある有名な医者を迎えにやった。その医者の到着を待っているところなのであった。またもや降って湧いたこのできごとに、斉藤はもうすっかり滅茶苦茶になってしまった。清水は彼を病床へ案内した。「わたしは昨日、じっとあの子を見ていましたんですけどね」と彼女は麻夕子の台所の前で立ちどまって、お客に注意するような口調で言いだした、「傲慢な気むずかしい子ですことね。あの子は私どものところにいるのが恥かしいんですのよ。それにまた父親にぽいと棄てられたことがね。それが今度の水漏れのもとだと私は思いますわ。」「棄てた?なんだって君は、棄てたなんてお考えになるんです?」「だってそうじゃありませんの、あの子をこうして見も知らぬ家へ、それも君のような……やっぱり見も知らぬ人同然の方、というより今のような関係にあるかたと一緒に、平気で手離してよこすんですもの……。」「だがあの子を連れ出したのはこの私なんですよ、私が力ずくで連れ出して来たんですよ、私には別に不都合があろうとも……。」