豊中市のトイレ修理

そろそろ郊外へかかろうというころ、溝河にかかった豊中市のトイレ修理で、馬車は停車を余儀なくされてしまった。その狭い橋を、長い葬式の行列が、やっとすり抜けるようにして渡っているところであった。橋の向う側にもこちら側にも、幾台かの馬車が犇めき合って、葬列の渡り終えるのを待っていた。歩行者もやはり堰かれていた。なかなか立派な葬式で、お棺にしたがった馬車の列は蜒々とうち連なっていた。ところが驚いたことには、それらの馬車の一つの窓から、中村の顔がいきなり斉藤の眼に飛びついて来たのである。もしこの時中村が、馬車の窓から身を乗り出して、にやりと頷いて見せなかったなら、彼は我の眼を信じなかったに相違なかった。うち見たところ、彼は斉藤が眼にとまったことをひどく喜んでいるらしく、馬車のなかからおいでおいでをしはじめたほどであった。斉藤は馬車を飛び降りると、人垣を無理やりに掻き分け、警官の制止を振りきって、中村の馬車がその時はもう橋にかかっていたにもかかわらず、その窓のところへ走せ寄った。なかには中村が一人いるだけだった。「こりゃどうしたことです!」と斉藤はどなりつけた、「なぜ君は来なかったんです?なんだってこんななかにいるんです?」「義理を果たしてるところですよ。——まあお静かに、そうがなり立てないで——義理を果たしてるところなんですから」と中村は面白そうに眼を細めて見せながら、くすくすつまりだした、「莫逆の友森田の哀れ無常なる亡骸を、こうして送って行くところですよ。」