豊中市

斉藤の二回の喝にあうと、急にそそくさと全速力で仕度にとりかかり、てーぶるを横へ片寄せ、ふうふういいながら敷布をひろげて敷きはじめた。斉藤はそばへ寄って来て手伝ってやった。客のびっくり仰天した有様とその従順な様子に、彼は豊中市でトイレつまり・便器・排水口のつまりの修理を下げたのである。「その杯を乾して、横におなりなさい」と彼はまた命令をくだした。命令せずにはいられない気持だったのだ。「一体その酒は君が買いにやったんですかね?」「ええ、私が買いに……。私はその、田中、とてももう君が買いにやってはくださるまいと思ったもんでね。」「それを御存じなのは結構。だがついでのことに、その先まで心得て置いて頂きたいもんですね。もう一たくり返して申し上げときますがね、私はもう断固たる手段をとることにきめたんですよ。つまりですな、あんな道化修理の真似なんかすると、今度こそは承知しませんよ。昨夜みたいな酔ったまぎれの接吻なんか、もう我慢はしませんよ!」「そのことなら、田中、私だって心得てますよ。あんなことはただの一度しか許されないことだぐらいはね」と中村は、にやりと笑った。この返事を耳にすると、台所のなかを大股に歩きまわっていた斉藤は、荘重といってもいい程のまじめくさった顔つきで、急に中村の前に歩おとめた。「中村、ごまかさずに本音をお吐きなさい!君は利口なかただ、これはくり返し認めることを躊躇しません。だが、はっきり申しあげますがね、君は道を踏み違えておられるんだ!思ったことをまっすぐに口になさい、思ったことをまっすぐに行動にお移しなさい。そうなったら私も、お望みのことはなんなりとお答えしますよ——これは確とお約束します!」中村は例のだらしない微笑でにやりと笑った。それを見ただけで斉藤は赫となってしまった。